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人間、人生を振り返れば、狂い始めたターニングポイントというのが、間違いなく2・3はあるはずだ。自分にもある。決して劇的な瞬間ではなく、地味に、かつ避けようが無い何か。擬音で表すなら「ぼとり」という感じ。鮮やかな記憶ではないが、忘れられないもの。

そういう、日常に限りなく近いところにあって、それでいてあっさりと人の生を左右してしまうような、ほんの一瞬を書いてみたい。じわりと蝕むような一言に、数秒だけ言葉詰まるその一瞬を、何行でもかけて表してみたい。人は簡単に変わらないけれど、それでもその人が、何かの拍子に、例えば何かの匂いをトリガーに、フラッシュバックして鳴り止まない一言になるような、そんなワンシーン。

そういう、「狂いの踏み外し始め」みたいなものと、それを思い出してしみじみ語るところが、とにかく好きだ。そういうものを書いて、そういうものだけを書いて、ただ書くだけで一生を終えたいくらい。

こんな風に自分が狂い始めたターニングポイントも、そういえばあったな、と、ふと思った。