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「それで、最近記事の方はどうなの?」
「いや〜まあ、悪くはないねんけど……イマイチ、パッとせんのよなあ」
「それでまたフェイクニュース作ろうとしてんのか」
「人聞き悪いなぁ。退屈してる世の人々に、ちょっと刺激的なお話を届けたいだけやのに」
「よく言うよ。で? 次はどんなやつにするの?」
「どないしよかな。ご時世的に、どこかへ行って何かある系のやつは、バズらん気がするんよ。下手しい炎上もんやからな」
「ああ、なんか前にやってたよね。《山頂メール》だっけ? 突然メールが届いて、指定された山の頂上に行くと、本人の死体の写真が置いてあるってやつ。で、裏返すと『最高の山頂を』って書かれてる」
「それな。準備も大変やし、今時流行らんわ……《七夕ドッペル》も微妙やったな」
法則性なく、日本各地の枝垂れ柳に、同じ短冊が吊られている……てやつか。ボクは好きだったけどな」
「不気味さは悪くないし、真似しやすいけど、インパクトに欠けるんよ。もっと恐怖と衝撃がないと……」
「《鶏の早贄》は? カカシの頭が一晩で全部ニワトリの死骸になっているってやつ」
「あれも大変すぎるからもうやりたないわ。バレたら犯罪スレスレやし」
「それは他もそうだよ」
「せやな……宗教、とかどうやろ」
「宗教?」
「そう。知る人ぞ知るアンダーグラウンドな信仰宗教。噂が噂を呼び、それに惹かれた社会不適合者を取り込んで、ひっそりと信者を増やしとる邪教……に、潜入調査、とか」
「へえ、良いんじゃない? じゃあその宗教は病を信仰してるとかどう?」
「病を?」
「そう。この世相も全部、神の裁きだって言って、選民思想を煽ってる」
「どゆこと?」
疫病とか伝染病は、弱者を淘汰し選ばれし者を示す神の意思だ……みたいな教義を掲げてるとか。だから、病気を広めて人類をある程度淘汰したがってる。自分達こそが、選ばれし者だって」
「な……なるほど」
「そうだな……インパクトを与えるなら、何か怪しげな実験なんかしてたら良いかもね。例えば、肉塊を芸術的に切り刻んで、腐らせて、病原菌を製造してる……とか」
「おお……ええやんええやん!」
「宗教の名前は……そうだな。腐肉の花……サルコーマ。《サルコーマの花の会》……なんてどう?」
「め……めちゃくちゃええなぁ! なんか書けそうな気ぃしてきたわ! ほんまありがとうな!」
「はは、良かった。もし本当に潜入調査したくなったら教えて」
「え?」
「ボク、会員だから」